犬・猫の電気化学療法(ECT)
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犬・猫の電気化学療法(ECT)
がん治療に、もうひとつの選択肢を。
外科・放射線・抗がん剤に続く「第4の選択肢」として注目される電気化学療法
手術以外の方法を探している。
できるだけ体の機能を残してあげたい。
高齢なので、大きな手術を受けさせることに迷っている。
再発してしまい、次の治療方法を探している。
そのような犬・猫に対して、電気化学療法(Electrochemotherapy:ECT)という選択肢があります。
当院では、犬・猫のさまざまながんに対して電気化学療法を実施しています。
院長は、猫の舌扁平上皮癌に対する電気化学療法を国際学術誌に報告しているほか、口腔内リンパ腫など複数のECT症例について学会発表を行っています。
また、日本獣医がん学会の電気化学療法シンポジウムではアドバイザーを務め、実際に治療した多数の症例を紹介しています。
「この子にECTが適しているか知りたい」という段階からご相談ください。
このような場合にECTを検討できることがあります
- 腫瘍を大きく切除することが難しい
- 手術による機能や外見への影響をできるだけ抑えたい
- 手術後に局所再発した
- 十分な外科マージンを確保することが難しい
- 口腔内、皮膚、皮下などに局所病変がある
- 他の治療だけでは局所制御が難しい
ECTが適しているかは、腫瘍の種類、大きさ、深さ、発生部位、転移の有無などによって異なります。当院では外科治療、薬物療法、放射線治療など他の治療選択肢と比較したうえで、症例ごとにECTの適応を判断しています。
電気化学療法とは?

電気の力で、抗がん剤を腫瘍細胞の中へ届ける治療です
電気化学療法は、抗がん剤と非常に短い電気パルスを組み合わせた局所がん治療です。
細胞の表面には「細胞膜」という壁があります。
特殊な電気パルスを加えると、この細胞膜に一時的に小さな通り道ができます。
そこから抗がん剤を腫瘍細胞内へ効率よく取り込ませることで、抗腫瘍効果を高めます。
わかりやすく言えば……
電気パルスによって、抗がん剤が腫瘍細胞に入るための「扉」を一時的に開く治療です。
① 抗がん剤を投与
↓
② 腫瘍に電極を当てる/針電極を刺入
↓
③ ごく短時間の電気パルス
↓
④ 腫瘍細胞の膜に一時的な通り道ができる
↓
⑤ 抗がん剤が細胞内に入りやすくなる
なぜ「第4の選択肢」なのですか?
犬・猫のがん治療には、大きく分けて、
外科治療
放射線治療
がん薬物療法(抗がん剤)
という3つの治療があります。
電気化学療法は、これらを補完する新たな局所治療の選択肢として獣医療でも利用されるようになっています。
ECTの特徴は、
「切除する」のではなく、腫瘍が存在する場所で治療できる
ことです。
そのため、
「手術すると大きく切除しなければならない」
「できるだけ形や機能を残したい」
「外科手術後に腫瘍細胞が残っている可能性がある」
「再発した腫瘍をもう一度大きく切除することが難しい」
といった場合にも検討できる可能性があります。
またECTは単独で行うだけではなく、外科手術・抗がん剤治療などと組み合わせることもできます。
どのようながんが治療対象になりますか?
ECTは、電極を直接当てたり、針電極を刺入したりできる腫瘍が主な治療対象です。
当院では、腫瘍の種類だけでなく、大きさ・深さ・発生場所・転移の有無・これまでの治療歴・全身状態などを総合的に評価して適応を判断します。
ECTを検討できる代表的な腫瘍
- 口腔内腫瘍
- 扁平上皮癌
- 悪性黒色腫(メラノーマ)
- 肥満細胞腫
- 軟部組織肉腫
- 皮膚・皮下腫瘍
- 一部のリンパ腫
- 外科切除後に腫瘍細胞の残存が疑われる病変
- 再発した局所腫瘍
その他の腫瘍についてもご相談ください。
ECTですべてのがんを治療できるわけではありません
ECTは主として局所の腫瘍を対象とする治療であり、腫瘍の種類、発生部位、病変の大きさや深さなどによっては適さない場合があります。また、転移を伴う腫瘍では全身治療などを組み合わせる必要があります。
当院では「ECTを行うこと」自体を目的とするのではなく、腫瘍の診断や進行度を評価したうえで、その患者さんに適した治療選択肢の一つとしてECTをご提案しています。
当院が特に大切にしていること
腫瘍を小さくするだけでなく、「その子の機能」を守る
特に口腔内に発生するがんでは、
食べる
飲み込む
舌を動かす
口を閉じる
といった当たり前の機能が、腫瘍や治療によって失われてしまうことがあります。
もちろん、がんをできる限り制御することは重要です。
しかし、私たちはそれと同じくらい、
「治療後に、その子がどのように生活できるのか」
を大切にしています。
腫瘍の場所によっては外科手術が最善の治療です。
一方で、大きな切除によって重要な機能が失われる可能性がある場合には、ECTがもうひとつの選択肢になることがあります。
猫の舌扁平上皮癌に対するECTを国際学術誌に報告しています
猫の舌に発生する扁平上皮癌は、治療が難しい腫瘍のひとつです。
当院では、舌扁平上皮癌の猫に対して電気化学療法を実施し、その治療経過を国際学術誌 Frontiers in Veterinary Science に報告しました。
治療前

ECT後

その後

この症例では、ECT後に腫瘍の縮小だけでなく、口腔内疼痛の軽減、自発的な食事摂取の回復、体重増加が認められました。
私たちが特に重要だと考えたのは、
「舌を残し、食べる機能をできるだけ維持できたこと」
です。
ECTはすべての舌扁平上皮癌に同じ効果を示すわけではありません。
しかし、従来の治療が難しい症例に対して、局所制御と生活の質の維持を両立するための選択肢のひとつになり得ると考えています。
※掲載症例の治療結果であり、すべての患者さんに同様の効果を保証するものではありません。
犬の口腔粘膜リンパ腫に対するECT症例
犬の口腔粘膜リンパ腫に対して電気化学療法を実施した症例です。
ECT治療前
ECT治療後の経過①
ECT治療後の経過②
本症例は、犬の口腔リンパ腫に対する電気化学療法の症例報告として、国際学術誌 Frontiers in Veterinary Science に受理され、現在出版準備中です。
当院ではECTに関する学術活動にも取り組んでいます
ECTを「行う」だけでなく、治療経験を学術的に発信しています
院長は日常診療でECTを実施するとともに、その治療経験を学会・論文を通じて発信しています。
国際学術誌への症例報告
猫の舌扁平上皮癌に対するECT症例:Frontiers in Veterinary Science 掲載
犬の口腔リンパ腫に対するECT症例:Frontiers in Veterinary Science 受理、出版準備中
学会発表
犬の口腔内リンパ腫など、複数のECT症例を報告
日本獣医がん学会
電気化学療法シンポジウム アドバイザー
シンポジウムでは、実際に当院で治療した多数の症例を提示し、治療方法、適応、治療後の経過などについて紹介しました。
私たちは、新しい治療を単に導入するのではなく、
実際に治療する → 経過を検証する → 学会で共有する → 論文として発信する
という姿勢を大切にしています。
このような場合には、一度ご相談ください
「手術しかない」と言われた
大きな手術を受けさせるか迷っている
高齢なので治療による負担が心配
できるだけ舌や口などの機能を残したい
がんが再発してしまった
手術後に腫瘍が残っていると言われた
放射線治療に通うことが難しい
今の抗がん剤治療以外にも方法がないか知りたい
他院でECTを勧められ、詳しい説明を聞きたい
ひとつでも当てはまる場合には、ECTが適応になるかどうかも含めてご相談ください。
よくあるご質問
Q. 電気を流す治療は痛くありませんか?
ECTでは電気パルスによって筋収縮などが起こるため、通常は麻酔下で治療を行います。
治療後には腫瘍組織の炎症や腫脹、壊死などが生じることがありますので、腫瘍の場所や治療範囲に応じて疼痛管理を行います。
Q. 何回くらい治療しますか?
腫瘍の種類や大きさ、治療への反応によって異なります。
1回の治療で十分な局所効果が得られる場合もあれば、腫瘍の反応を確認しながら複数回実施する場合もあります。
そのため、最初から一律に「○回」と決めるのではなく、治療後の状態を評価しながら次の治療を検討します。
Q. 抗がん剤なので副作用が心配です。
ECTでは抗がん剤を使用するため、副作用がまったくないわけではありません。
一方、ECTは腫瘍局所で薬剤の効果を高めることを目的とした治療であり、通常の全身化学療法とは治療の考え方が異なります。
治療前に血液検査や全身状態を確認し、安全性を考慮して実施します。
Q. 高齢でも受けられますか?
年齢だけでECTができないということはありません。
重要なのは、年齢そのものよりも、心臓・腎臓・肝臓などを含めた全身状態と麻酔リスクです。
高齢の患者さんについても、治療によって得られるメリットと負担を比較して判断します。
Q. ECTをすれば手術をしなくてもよいのでしょうか?
必ずしもそうではありません。
腫瘍によっては外科手術が最も適した治療です。
逆に、発生場所や大きさなどによってECTを選択した方がよい場合や、外科手術とECTを組み合わせることが有効と考えられる場合もあります。
当院ではECTありきではなく、それぞれの患者さんに適した治療方法をご提案します。
Q. 他の動物病院で治療中でも相談できますか?
はい。
他院で診断・治療中の患者さんについても、ECTの適応を含めた腫瘍科セカンドオピニオンに対応しています。
可能であれば、
病理検査結果
血液検査結果
レントゲン・CTなどの画像検査
現在使用している薬
これまでに行った治療内容
をご準備ください。
「ECTをするか」ではなく、「この子にとって何が一番良いか」を考えます
電気化学療法は非常に有用な治療法ですが、万能な治療ではありません。
外科手術が適している患者さんもいれば、放射線治療、抗がん剤治療、あるいは痛みを抑える緩和治療を優先した方がよい患者さんもいます。
だからこそ当院では、
「ECTができるからECTをする」
のではなく、
「この子にECTを行う意味があるのか」
を最初に考えます。
腫瘍の制御だけでなく、痛み、食事、身体機能、年齢、ご家族の希望なども含めて治療方法をご提案します。
他院でがんと診断された方へ
診断を受けたばかりで、
「本当に手術しかないのだろうか」
「ECTという治療を知ったけれど、うちの子にもできるのだろうか」
という段階でも構いません。
ECTを実施するかどうかを決めてから受診していただく必要はありません。
まず現在の病状とこれまでの検査結果を確認し、ECTを含めてどのような治療選択肢が考えられるかをご説明します。
がん治療で迷われている場合には、一度ご相談ください。
獣医師の先生方へ
当院では、他院で診断・治療中の犬・猫について、電気化学療法(ECT)の適応相談およびECT治療のご紹介を受け付けています。
「外科切除が難しい」「局所再発を繰り返している」「ECTが適応になるか相談したい」といった段階でもご相談ください。
病理・細胞診結果、画像検査結果、これまでの治療経過などをご提供いただければ、症例ごとにECTの適応を検討いたします。
ECTのみの治療依頼にも対応しています。
診察・検査後には、検査結果など当院での受診内容をご確認いただける資料を必要に応じて飼い主様へお渡しいたします。
紹介元の先生への直接の診療概要の連絡をご希望の場合は、紹介時にお知らせいただければ対応いたします。
お問い合わせ時にご記載ください
- 紹介病院名
- 担当獣医師名
- 患者名
- 動物種/品種/年齢
- 診断名または疑われている腫瘍
- 病変部位
- これまでの治療経過
- ECTへの紹介目的
病理検査、細胞診、画像検査などの資料がある場合には、メールへ添付してお送りください。


